カテゴリ:読書メモ( 4 )

歴史地理教育 2012.2 NO.785

先日、歴史教育者協議会のサイトから注文した『歴史地理教育』が届いた。特集は、震災と漁業である。特集も大切なテーマを扱っているが、わたしの目当ては、小特集の、追悼●遠山茂樹氏である。渡辺賢二・佐藤信雄・加藤文三・宮原武夫・古谷博・大串潤児の6氏が原稿を寄せている。
渡辺さんによると、「歴史学専攻生の中でさえ、遠山茂樹先生について知らない学生がいて、唖然とすることがある」らしい。

果たして高校生は、4月に歴史について何を教わるのだろうか。「教科書検定」についてや、「歴史教科書」について、また教科書の執筆者についてなどから教わっているのだろうか。
高校生は、自分が教科書として使っているものを唯一の歴史教科書として考えていて、他の高校生も同じものを使っていると思っているのではないだろうか。たとえ別の教科書の存在を知っていても、執筆者によって歴史記述の方法や用語の記載に異なる点があるとまでは思い至らないかもしれない。

もちろん教科書執筆者が歴史学者を代表するわけではないが、簡単な紹介くらいしても良いだろう。紹介の中で、執筆者の専門分野を伝え、何章はだれだれの執筆だろう、と考えさせたい。

他社の歴史教科書との読み比べもさせてみたい。

このように、歴史(世界史にしても日本史にしても)を教えることができたなら、遠山茂樹に限らず、大学受験をし、歴史学専攻生を志す学生の多くは高校生のうちに、歴史家の名を知り、渡辺さんの嘆きも少しは和らぐのではないだろうか。
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by kawa0201jp | 2012-02-20 23:09 | 読書メモ

良知力『向こう岸からの世界史』

本書は、ウィーン(部分的にはベルリン)を舞台にした1948年革命の実像を新たな角度から見直したものである。深刻な問題点を含んでいながら、ウィーン革命のリアリティが生々と叙述されている点でとても面白く読める魅力的な世界史の本である。著者は19世紀ドイツのヘーゲル主義的西欧中心思想、とくにアジア=スラヴの人々の問題に対するヘーゲル左派やエンゲルスの近代主義史観を批判しつつ、ウィーンにおける48年革命のなかにひそむ民族問題の意味をえぐりだしている。革命圧殺者の先兵となったクロアティア兵のなかに著者はベトナムに送られたアメリカの黒人兵の姿を重ねあわせると同時に、ブルジョアジーに裏切られつつブルジョア革命のために死んでいった「プロレタリアート」のなかにも、ボヘミア出身の多くのスラヴ人を見いだしている。民族的対立と民族問題の根深さと重要性をあらためて考えさせられる1冊である。a0239911_957656.jpg


1848年のウィーンの革命史の実態を詳細に描くなかで、著者は「歴史なき民」こそが歴史の担い手であり、革命の主体であったという事実を掘り起こす。少数民族や賎民が生き生きと描かれた本書は、著者の自己の半生をかけて達成した成果を克服しようとする試みであり、思想史から社会史への転換点を示す記念碑的作品である。
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by kawa0201jp | 2012-01-16 09:54 | 読書メモ

土井正興『新版スパルタクスの蜂起』

 本書は、共和制末期ローマの大奴隷反乱=スパルタクス蜂起の内容や性格を解明しつつ、この奴隷反乱がローマ史上に占めた歴史的役割を論じたものであり、前近代社会の階級闘争史では最も魅力ある著書の一つである。奴隷制社会としてのローマが抱えている矛盾が生々と簡明な文章で叙述され反乱の社会的背景が浮き彫りにされると同時に、反乱のプロセスと結果の分析によって、スパルタクス蜂起がめざした奴隷解放の新しい方法、奴隷がかかえていた内部矛盾と敗北の原因、蜂起が残した世界史的・思想史的意義などがわかりやすく論じられている。歴史における民衆ないし被抑圧大衆の役割を明らかにしようとする著者の一貫した意図が、抽象的な理論としてではなく歴史の具体的な分析と叙述のなかに執拗に貫かれており、さわやかな感動をうんでいる。西洋古代史に関心を持つ人に限らず、広く歴史学を研究するものに一読をすすめたい。a0239911_2391238.jpg
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by kawa0201jp | 2012-01-14 23:05 | 読書メモ

土井正興『生きること学ぶこと』

土井正興『生きること学ぶこと』三省堂選書72、1980年
目次
Ⅰ軍国主義のくびきのもとで
Ⅱ戦後の嵐のなかで
Ⅲ「私の大学」歴研への「入学」
Ⅳスパルタクスとのであい
Ⅴ人間の尊厳の回復をめざして
Ⅵたたかい、たおれた人々とともに
あとがき

学生諸君からよく「なぜ先生は歴史なんかやっているのですか」ときかれることがある。こうした学生諸君の質問に、とても三〇分や一時間で答えることはできない。それは、現在、私がいまもまなんでいることと、いままで私がいきつづけてきたこととは、深いかかわりがあり、懸命に生きるなかでこそ、どのように学ぶべきかをくりかえし問いなおしてきたからである。これは学生諸君の顔を思いうかべながら、こうした素朴な問いにたいしてかかれた現在の段階での未熟なひとつの答案にすぎない。(裏表紙より)

1924‐1993年
1949年東京大学文学部西洋史学科卒業
大学非常勤講師や高校教諭を経て、専修大学教授
http://webcatplus.nii.ac.jp/#/134c01f0f7a
【読書メモ】
友人から『専修史学』第50号(2011年3月)を、2011年冬にもらった。「世界史教育」や「グローバルヒストリー」について話していて、それならと持ってきてくれたのがこれだった。周藤新太郎「世界史教育の視点から「世界史の現在」を考える」を読んだことによって、土井正興を知った。
『生きること学ぶこと』は目次を一瞥すればわかるとおり自叙伝である。生まれた家は、その直後、土井の父から、永田鉄山に譲られ、土井の一家は姫路に引越しをしたことから始まる。
歴史学研究会の歴史を知る上でも、世界史教育の進展について知る上でも多くの貴重な記述がある。
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by kawa0201jp | 2012-01-09 10:59 | 読書メモ


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