良知力『向こう岸からの世界史』
本書は、ウィーン(部分的にはベルリン)を舞台にした1948年革命の実像を新たな角度から見直したものである。深刻な問題点を含んでいながら、ウィーン革命のリアリティが生々と叙述されている点でとても面白く読める魅力的な世界史の本である。著者は19世紀ドイツのヘーゲル主義的西欧中心思想、とくにアジア=スラヴの人々の問題に対するヘーゲル左派やエンゲルスの近代主義史観を批判しつつ、ウィーンにおける48年革命のなかにひそむ民族問題の意味をえぐりだしている。革命圧殺者の先兵となったクロアティア兵のなかに著者はベトナムに送られたアメリカの黒人兵の姿を重ねあわせると同時に、ブルジョアジーに裏切られつつブルジョア革命のために死んでいった「プロレタリアート」のなかにも、ボヘミア出身の多くのスラヴ人を見いだしている。民族的対立と民族問題の根深さと重要性をあらためて考えさせられる1冊である。
1848年のウィーンの革命史の実態を詳細に描くなかで、著者は「歴史なき民」こそが歴史の担い手であり、革命の主体であったという事実を掘り起こす。少数民族や賎民が生き生きと描かれた本書は、著者の自己の半生をかけて達成した成果を克服しようとする試みであり、思想史から社会史への転換点を示す記念碑的作品である。
1848年のウィーンの革命史の実態を詳細に描くなかで、著者は「歴史なき民」こそが歴史の担い手であり、革命の主体であったという事実を掘り起こす。少数民族や賎民が生き生きと描かれた本書は、著者の自己の半生をかけて達成した成果を克服しようとする試みであり、思想史から社会史への転換点を示す記念碑的作品である。
by kawa0201jp
| 2012-01-16 09:54
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