良知力『向こう岸からの世界史』

本書は、ウィーン(部分的にはベルリン)を舞台にした1948年革命の実像を新たな角度から見直したものである。深刻な問題点を含んでいながら、ウィーン革命のリアリティが生々と叙述されている点でとても面白く読める魅力的な世界史の本である。著者は19世紀ドイツのヘーゲル主義的西欧中心思想、とくにアジア=スラヴの人々の問題に対するヘーゲル左派やエンゲルスの近代主義史観を批判しつつ、ウィーンにおける48年革命のなかにひそむ民族問題の意味をえぐりだしている。革命圧殺者の先兵となったクロアティア兵のなかに著者はベトナムに送られたアメリカの黒人兵の姿を重ねあわせると同時に、ブルジョアジーに裏切られつつブルジョア革命のために死んでいった「プロレタリアート」のなかにも、ボヘミア出身の多くのスラヴ人を見いだしている。民族的対立と民族問題の根深さと重要性をあらためて考えさせられる1冊である。a0239911_957656.jpg


1848年のウィーンの革命史の実態を詳細に描くなかで、著者は「歴史なき民」こそが歴史の担い手であり、革命の主体であったという事実を掘り起こす。少数民族や賎民が生き生きと描かれた本書は、著者の自己の半生をかけて達成した成果を克服しようとする試みであり、思想史から社会史への転換点を示す記念碑的作品である。
[PR]
by kawa0201jp | 2012-01-16 09:54 | 読書メモ


世界史研究会運営ブログ


by kawa0201jp

プロフィールを見る
画像一覧

カテゴリ

全体
研究会案内
参加記
文献紹介
読書メモ
足利学校
足利探訪
未分類

以前の記事

2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月

フォロー中のブログ

ウラゲツ☆ブログ
歴史の諸問題

メモ帳

最新のトラックバック

ライフログ


戦争と近代―ポスト・ナポレオン200年の世界


国家の興亡と歴史家―復刻:解説


近代の超克―永久革命

検索

その他のジャンル

ブログパーツ

最新の記事

日本近世の自立と連帯
at 2012-03-04 09:47
歴史地理教育 2012.2 ..
at 2012-02-20 23:09
明石弁天厳島神社
at 2012-01-29 21:21
山川長林寺
at 2012-01-24 17:21
歴史科学協議会サイトより転載
at 2012-01-22 22:49

外部リンク

ファン

記事ランキング

ブログジャンル

画像一覧