平泉澄「金澤文庫と足利學校」について

平泉澄「金澤文庫と足利學校」は、大正15年に至文堂から刊行された『中世における精神生活』のひとつの章として収められている。現在は、平成18年に錦正社から「漢文・古文に返点・濁点・句読点をつけ努めて読みやすくし」たものが刊行されている。
錦正社のサイトには以下のようにある。

 平泉澄博士の第一著作で、近代的な中世史研究の原点とも評価される名著を八十年ぶりに組み直し、新たに解説・索引を加え、漢文・古文に返点・濁点・句読点をつけ努めて読みやすくし復刊。
 博士は、従来、闇黒の世界、錯雑の世界と称され、ほとんど顧られることがなかった「中世に於ける精神生活」の種々相を解明して一書を成すことが年来の願いであった。
 上代と近世との中間に在って承前起後の位置を占める中世を理解する事は、国史全体を貫く理解となること、また中世の精神生活を明らかにする事が、混迷せる現代の思想界に一つの光明・指針を投げかけることになると確信したからである、という(自序)。
 本書は、出版後、学界・思想界にも当時の世相にも極めて大きなセンセーションを巻き起こした。しかも今なお、学位論文『中世に於ける社寺と社会との関係』(大正十五年刊)と共に高く評価されている。本格的に歴史と社会の見直しを迫られている今こそ、この名著が読み直される好機と考え、ここに復刊する。とりわけ若い史学研究者や歴史愛好家たちに、このユニークな大著を丹念に味読して頂きたい。 
 

ここでは、至文堂によるが、「金澤文庫と足利學校」の問題意識を記した文章を引いておく。旧字体は、新字体になおしてある。金沢文庫と足利学校が、教育・研究機関としてはさほど機能していなかったとする。今後、足利学校の歴史を批判的に考えていくにあたって重要な指摘もみることができる。
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 中世に於いて宗教がすべての文化価値の最高究竟のものと考へられ、上代に於いて貴族文化の栄えたときには「木の端のやうに」思はれた僧侶が、最も尊きものとして尊敬せられ、其他のものは此の宗教に従属し、その関係に於いて僅かにその価値を保有すると考えられるるに至ったのは、無論従来支配階級であつた貴族が、政治上にも経済上にも俄かにその勢力を失い、それと共に貴族文化が究速度に衰退した結果ではあるが、しかし之に代つて宗教文化が俄かに台頭し、あれ程迄に深く宗教意識を全国民の脳裏に呼び起し得た事は、当時に於ける教育が僧侶の手によって握られてゐた特殊の事情に、その最も深き原因を帰せなければならない。
 しかるに中世の教育を説くものは、従来殆んど一定して、この時代を暗黒の時代と見、而してその暗黒の中に於ける稀なる光明として、金沢文庫と足利学校との二つを非常に重大視して居る。しかしながら此の二者は、果してそれほどの価値があつたかどうか、即ち従来説かるるが如き重大なる意義を中世文化史上に持つものであるかどうか、私は疑いなきを得ない。そこで本題に入るに先だち先づ金沢文庫と足利学校との歴史を調べ、それが中世の文運に如何なる貢献をなしたかを考へ、その歴史的意義を論定したいと思ふ。
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by kawa0201jp | 2012-01-10 11:11 | 足利学校


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